【ボランティア白書】時代は変化してもチャンスは生まれる――環境ボランティアの変遷とユースへの期待

星野智子さん

一般社団法人 環境パートナーシップ会議 副代表理事 

環境問題への関心が高まった90年代

 1990年代は、環境問題が国内外で大きく注目を集め、環境ボランティアが活発になった時期でした。1992年の国連環境開発会議(リオサミット)は、世界的に環境問題が注目された契機となりました。また、1995年の阪神淡路大震災は「ボランティア元年」と呼ばれ、ボランティア全体への関心が高まり、NPO法ができるきっかけにもなりました。1997年は1月に日本海でナホトカ号重油流出事故が起き、重油回収作業の支援として多くのボランティアが駆け付けました。私も行ったのですが、それが私の環境活動の原体験の一つとなっています。また、12月に地球温暖化の京都会議が開催されました。社会的に関心が喚起されたうえに、多くの市民、それも大学生など若い世代も活動を始める契機となりました。

 

イベントや事故をきっかけにボランティアへの関心が高まる

 このように、大きなイベントや出来事、事故によって関心が高まり、ボランタリーな活動が生まれるきっかけになっていると思います。この流れは2000年代に入っても続きました。

 2005年の愛知万博は市民参加型の万博として、「地球市民村」が設けられました。NGOが半年ごとに入れ代わり立ち代わり出展できる長期の出展ブースが設けられ、発信の場が与えられました。今までと違ったものだったと思います。2010年には名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されました。生物多様性や自然保護について関心が高まり、ボランティア活動も大いに盛り上がりました。

 環境パートナーシップ会議が運営する地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)では、環境NGOのボランティア合同説明会として「環境ボランティア見本市」を2006年から2011年まで開催していました。その後は「環境ボランティアナビ」という冊子を発行し、環境ボランティアの情報発信に努めました。

 

東日本大震災で流れは変わった

 この流れが大きく変わったのは、2011年3月11日に東日本大震災が起きてからです。2005年には「チームマイナスゼロ」や「クールビズ」などが生まれ、環境に取り組むことがメジャーになっていましたが、311以降は、防災、まちづくり、東北の復興などに世間の関心が移りました。環境と言えば原発問題や放射能汚染に関する活動が目立つ時期になりました。また自然環境教育の団体などは実力発揮の場でもありました。キャンプなどの自然体験活動や野外環境教育団体は、非日常の野外活動を取り入れているので、災害時に強いのです。屋外で火を焚いたり、水の調達や、集団内でのコミュニケーション方法など。日常と異なる環境下で生きる力を養うことについてのノウハウを持っているという点ではこのような団体の力は大きかったと思います。国際協力団体も海外での農村開発などの経験・実績を持っている団体がありますから、東北でそのノウハウが生きました。

 こうして311以降は既存の環境NGOへの関心は少し薄れてしまったケースもありますが、新しい流れも生まれました。例えば、福島で食用の農産物の替わりにコットンやヒマワリを育てたり、地域づくりに関わるなど、ちょっと違う形のNPOが出てきました。復興のためのNPOが出てきて、その中に環境活動をやっていた人が参加する、そういういい効果もありました。いわゆる環境NGOへの関心は薄れてしまったけど、新しい関心は生まれたし、色々ミックスしたり、新しい形の活動が生まれてきたりしました。

 

SDGsは環境問題の認識を広げるチャンス

 リオサミットから20年が経つ2012年、国連持続可能な開発会議(リオプラス20)が開催されました。そこからSDGs(持続可能な開発目標)策定のプロセスが始まります。GEその前後からGEOCではSDGsについての意見交換会をしたり、SDGsを知ってもらうためのアクションを行ってきました。

 SDGsは環境がベースだという意味では、関わる人や組織が皆環境に取り組むことになります。GEOCは環境とパートナーシップを大事にしています。ボランティアはいろいろな人とかかわる行動。パートナーシップ型の社会の中でこそ、ボランティアが活かされていきます。GEOCとしてはその層を厚くしていきたい。環境だけではなく、貧困、教育、障害、ジェンダーなど、総合的にSDGsは含まれているから、パイが増えてきたと思います。SDGsを活用して環境のことをもっと知ってもらうことが可能になりました。

 

「自分ごと化できる」ユースに期待したい

 今後の目標としては、ボランティアを促進するリーダー育成に力を入れていきたいです。そのために、ユースの団体、ボランティアコーディネートに関わる団体、各地のボランティアセンター、国際的な団体などと協力していきたいと思っています。お互いに知恵を出し合ってボランティアを増やし、市民参加型の社会を創っていきたいです。

 私はこれからの可能性はユース、つまりZ世代(1990年代中頃以降に生まれた世代)と呼ばれる人たちにあると思います。環境問題の話をしていると、若い人の反応がいいです。今の世の中がどこかおかしいということにみんな気付いているんですよ。気候変動問題のアクション「FridaysForFuture」などがいい例ですね。自分たちの未来が心配になっている、これは深刻な状況です。この不安を取り除くためにも、もう動き始めないとならない。見て見ぬ振りができなくなっているのです。自分ごととしてボランティア精神で動ければ人は変わるし、周りを変えることができますので、私はこれからの世代の人たちに期待をし、応援していきたいと思っています。